動画で見る財布の角のヘリ返し技法:菊寄せとそれにまつわる工具話をダラダラと


菊寄せとよばれるカド部分のヘリ返し技法です。パートさんに説明するために簡単に撮影。
菊寄せ技法は漉きが3割、革包丁での補正裁断が2割、土台や工具が2割、接着剤の使い方が1割、純粋に菊寄せの技術が2割かな。

革の話

・革の厚みやコシ、鞣しにもよりますが、0.2mmから0.25mm程度がちょうどいいくらいかと。
0.1mm~0.15mmだとちょっと薄すぎて強度的に不安になります。この薄さは漉き機がないと無理ですね

・タンニン系の革では菊寄せはちょとやりづらいです。私は苦手です。
タンニン革は”締める”鞣し方ですので柔軟性に欠けます。ヘリ返しの技法を使うメリットはあまりないです。
下手すりゃ破けてしまう。
それでしたら多少でもクロームが入っているコンビネーション鞣しの革で使ったほうがヘリ返しに適しています。
>こういう話もバスツアーで話しますから!よろしくお願いします!( ´∀`)bグッ!11/21(土) たつの市皮革まつり&タンナー見学バスツアー | phoenix blog 

裁断

・補正裁断。(適当にネーミングしています)
動画で斜めにカットしていますが、ここを厚みに対してどれくらいカットするかが結構重要。
(この重要性に気づくまでどれだけ時間費やしたか。。。)
感覚、ではなくて、きちんと論理的に説明できる裁断ラインがあります。

工具

土台

今回土台として硬質なゴム板を使っています。別にプラスチックでもいいのですが、きっちりと直線ラインが出ているもので。この土台をきっちりしたものを使うことがすごく重要。

白ボンド

・財布では白ボンドを使います。

サイビノール 100番 – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP
100番のほうがサラサラですので今回の制作にはオススメです。

白ボンドは「乾燥するまではニョルンとずらすことが可能」というのが特徴の一つ。
が、革の表につくと革をくすませる、という悪さをすることがあるので頻繁に掃除。それが手でぬぐう動作です。

ヘラでどれくらい白ボンドをすくい上げて、革のどの部分から塗り始めるか、どれくらい塗り載せるか、などはある程度理論的に説明出来ます。

これ以外にも両面テープと目打ちを使ってやる職人さんやゴムのりとピンセットで行う職人さんもいますね。

例えば下記のランドセル職人さんは「両面テープと目打ち」か「ゴムのりと目打ち」のどちらからで角を処理しているはずです。重要な工具は「指の爪」だったりしますね。

・目打ち

私は目打ち、と言っていますが、レザークラフトでは丸ギリ、という名称で販売しています。
この名称の違いって意味があるのかな??

クラフト社製 丸ギリ – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP
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ランドセル職人さんが使っているように目打ちでも菊寄せは可能です。
鞄やバッグの職人さんはこちらで菊寄せを行う人が多いように思います。

革の世界で使われている丸ギリは「先端が細く徐々に太くなる」というもの。
ワークショップなどを行った際に「針が抜けにくい!」という時は「針をグリグリと左右に揺らして無理やり引き抜こうとしたらダメです!一旦針を抜いて目打ちでぐりぐりとしてください」とお願いしています。

針は糸が入っている部分が一番強度が弱いわけで。その部分をグリグリすると簡単にポッキンと折れます。

で、そこでこのような丸ギリで穴をちょっとだけ大きくしてあげます。
私が手縫いワークショップやるときは必須の工具です。
ワークショップ参加した人は確実に丸ギリを帰りに買っていきますね。それくらい使いこなすと便利な工具です。

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普段使っている目打ち。上から

・100円ショップダイソーで購入。先端から急激に太くなる。場合によって使いやすい。
・手芸店で購入。先端からあまり太くならない。先端をちょっとだけ自分で削って丸めています。尖りすぎていると悪さすることもあるので意図的に丸めた目打ちがあると便利なんですよ。
・上記と同じ目打ち。先端をグラインダーで削っています。糸処理で糸を埋め込みたい時はこの方が便利。
・どっかで購入。一番先端が細い。糸をほどくさいに使うことも。

と、4種類を使い分けています。

同じような工具でも用途にあわせて使い分けたほうが便利です。
上記ランドセル職人さんの目打ちは太い目打ちを使っていますね。
太いほうがしならず力が伝わりやすいからです。また、革を傷めないように先端をちょっと丸めているかもしれませんね。

・捻とヘラ

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捻と呼ばれる工具を購入し、自分で削って厚みと形を調整しています。
ダイソーでテーブルナイフ買ってきて加工しても別に構わないと思います。
で、不格好にヘラを輪ゴムでお尻につけています。

白ボンドを塗る際に私はヘラを愛用しています。
不格好に捻に輪ゴムでつけているのは作業している時にいちいち工具を持ち帰る手間暇がもったいないからです。
動画ではわかりませんが、薙刀のようにブンブンと指先2本で振り回しながら使っています。
基本的に菊寄せをしているときはこの工具を右手から手放すことはありません。
ヘリ返しや菊寄せしている最中も右手で持ちっぱなし。

時は金なり

今回でしたら菊寄せ箇所が2箇所×5枚×20個と200箇所あるので時間との勝負です。
上記パーツを1枚2分かかるとしたら200箇所×2分で400分、7時間弱かかります。

道具をいったん持ち替える、で3秒×2回×200回、となると20分かかってしまいます。この20分が惜しいのでヘラ+捻合体で「持ち帰る手間暇」を少しでも削っています。
上記動画でみたら1分06秒のところでヘラから捻にひっくり返していますね。

まぁ、実際は裁断だけ延々と行い、補正裁断だけ延々、ヘリ返し+菊寄せを延々としますので7時間もかけません。

ペンギンはなぜ。。。

・ペンギンはビニールモデルのものです。画面が寂しいので配置しただけですわ~
>キングペンギン ビニールモデル

・FBでこの動画をあげると「疑問に思っていた左手の使い方がわかった!」という声があがりちょっと驚き。
こんなごく僅かに写っている左手を気にする人がいるとはなぁ( ゚Д゚)y─┛~~

菊寄せについても解説が載っている本が出版されました。

へり返し菊寄せ・ボックスコインケースに風琴マチ。初公開の技法多数な「革財布の仕立て方」特典付き | phoenix blog

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