【バックナンバーシリーズ】2012年4月11日:先日動画公開した小物職人の技の補足説明をしていきましょうかね


毎週日曜日はブログ、バックナンバーシリーズの日です。

割と軽い気持ちで(をいをい)始めたこのシリーズですが

店頭で

「いつも読んでますよ」

twitter担当から

「フォロワーさんから好評です」

とか言われて止めるにやめれなく(をいをい)なってしまっています 笑

まあでも、それだけPhoenixアーカイブには有益な情報が眠っていたということで、喜んでもらえるのであればまだまだ続けたいと思います!

さて今日も10年前の記事です。

まだ、私がPhoenixで働く前の記事で、こういう「裏側」が見れるのがPhoenixのブログの面白いところでした。

今ではSNSなどで「裏側」が表に出やすい時代になりましたが、それでもまだまだわたしたちが見られる表の世界はごくごく一部。

裏側を覗き見る背徳感(?)って楽しいですよね。

小物職人の車氏全面協力のブログですので、ぜひお楽しみください。

それではご覧ください!2012年4月11日の記事

先日動画公開した小物職人の技の補足説明をしていきましょうかね

 

序文:バックナンバーシリーズとは?

 

Phoenixはここでブログを2014年から書いていますが、実はそのもっと前から他のサーバで書いていました。訳あって現在のサーバへお引越ししましたが、1400ほどあった旧サーバの記事はお引越しできず、そちらのサーバに置きっ放しとなっております。
(旧サーバのブログはこちら

現在でも古いブログはご覧頂けますが、別サーバの記事なのでブログ内検索などでは引っかかりません。

有益な情報がたくさんあって、とってももったいないなー、と日々思っていたので、これから少しずつ【バックナンバー】としてこのブログ用に再編して掲載していこうと思います。

古い記事の引用となりますので、表現が古かったり今ではもっと便利になっていたりしますが、これは当時のまま載せようと思います。

他にも価格が当時と異なっていたり、登場人物がすでにPhoenixを去った人だったりしますが、こちらは誤解を避けるためにも、ご本人への配慮もあり伏字や編集したものとさせていただきます。

予めご了承ください。

 

本文:こういうブログが楽しくてPhoenixに吸い寄せられたんだよ

先日紹介した小物職人の動画の補足説明をしていきましょうかね

このようにDカンを通している小さなパーツですが、
小さくてもきちんと手づくりです。

動画で載せていませんでしたが、最初はこのようなパーツで納品されます。

まずこのパーツにホワイトメッシュ、と呼ばれる芯を貼ります。
無論これも刃型で裁断済みの品です。

ヘリ返しがメインの品の場合はこの芯が何よりも大事です。
この芯を基調としてヘリ返しは行われますのでこの芯がずれていたら全てが
ずれます。

刃型が綺麗にできているとこの芯の出来上がりも美しく、結果的に商品の
できも美しくなります。

刃型職人も一度じっくりと紹介したい話題ではあるのですが、ここらは
軽く以前触れているのでまた読んでみてください。

《刃型》こんな刃型ができた:手縫い線入刃型: レザークラフト・フェニックス
《刃型》こんな刃型もあると便利だよ&見積もり集: レザークラフト・フェニックス

芯を貼付け後に4隅を切り落とします。

4隅切り落としもスッパリと一直線ではなく、
このように角度をつけます。
このように裁ち落とすことで接着面が増え、結果的にヘリ返しが美しく出来ます。

裁ち落とす際に芯が接触しているギリギリのところを切るのではなく、0.2mmほど
残します。
残すことで4辺を折り返した際に芯が見えることを防ぎます。
細かい点ですがこういう点が美しさに反映されます。

ここで使っている芯はホワイトメッシュと言われているものです。
これを使うメリットは「目が存在しない」、という点です。

通常使うウェブロン(今はもう名前違うけどね、、)などの紙系統の芯には
目=流れが存在します。このように折り曲げるパーツに流れが存在する芯を使う場合は
流れに気をつけて製作しなければ作業性が大きく落ちます。

裁断は裁断屋さん、という専門職があり、専門職の方がミスしにくいようにも
気を使い「目のない芯」=ホワイトメッシュを使っています。

他方この芯にはデメリットとして酢酸エマルジョン系の接着剤が使いにくい、という
欠点があります。

その欠点が動画38秒の頃に見ることができます。
わかるでしょうか?一旦押さえた革が反発しています。

ホワイトメッシュはサラっとした接着剤を吸い込んでしまうため
酢酸エマルジョン系の接着剤が使いにくくなっています。
そのためヘリ返し完了後に指で強く押さえる、という工程が長くなってしまいます。

この「通常よりも長く、強く押さえる」といいますがせいぜい1秒ほど長いだけです。
それでも数多く作る職人さんは1秒でも短く、美しく、を目指します。

両面テープやゴムのり系統ならば今回のようなデメリットは少ないのですが、
今度は作業効率が悪くなってしまいます。

小物の世界では酢酸エマルジョン系の接着剤がよく使われます。
当店でも販売されている「サイビノール」という接着剤ですね。

この接着剤のメリットとしては
・乾燥が早い
・片方に塗るだけでいいので作業効率がいい
・さらっとしているので伸びがいい

デメリットは
・少しでも吟面につくと汚れる。革によってはすぐ拭っても跡が残ります
このデメリットがあるから動画ではゴム板盤面を指でぬぐっています。
・乾燥が早いので広い面には不向き
・さらっとしているのがメリットだが、布などに使うとよれよれになる場合がある
・乾燥が早い=塗り溜めが出来ない
・貼付け後1秒ほど押さえないとくっつかない

などなどがあります。

ゴムのり・両面テープももちろん使い分けます。
それぞれの特性を把握し、その場面場面に適したものを使います。

接着の話もしだすと延々と2時間は喋れるのですがこれまた次の機会に。。。

この一連の流れ「パーツに芯を貼る>4隅を切り落とす>ヘリ返す」を
20秒でこなしていきます。
今回の仕事では60個×20秒ですからおおよそ20分で全部ヘリ返します。

この後に縫製作業に入ります。

縫製作業では平ミシンを使います。

革用ミシンには平ミシン・腕ミシン・ポストミシンが存在します。

平ミシンは平面のものを縫うのに適し、
腕ミシンは立体的なもの、鞄などに適しています。
ポストミシンは特殊な鞄や靴でよく使われています。

今回のパーツのように段差がなく、平面状のものの場合は
平ミシンが最適です。

小物職人さんの中にはこの平ミシンだけしか持っていない、という方もおられます。
今回紹介の職人さんは平ミシンと腕ミシンを使い分けていますね。

「腕ミシンだけでできないの~?」という質問も受けます。
解答としては「可能だけど、平面のものを縫うときは平ミシンの方が締まりがいい」という
ものでした。

とある、腕ミシンだけ所有の鞄職人さんは平面状のものを縫う際は
「腕ミシンを平面にするアタッチメントパーツ」をいちいち装着していました。

えっ!めんどいじゃん~
「こうしなきゃ美しくならん!」

という解答でしたね。

と、まぁこの小さなパーツ一つでもこのように様々な知識と技術が
詰め込まれています。

このヘリ返しメインの小物職人さんは今ものすごく数が減ってきています。
数が減ってきている、ということは高齢者の職人さんばかりで
ヘリ返しメインの若手職人の数が少ない、ということです。

ってことは、あと数年たてば需要が高くなる職人だと言えるわけです。

編集註:<以下の催しは既に終了しております>

このスキルを学べる小物塾が土曜日6時間×1ヶ月4回×11ヶ月開催されます。
11ヶ月で習得するコースですが興味ある方はまた募集要項をご覧下さい。
今年5月から開講です☆

 

過去の関連blog:


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*