刃型の話をしよう:穴も空けてくれる刃型は注意点がいっぱい。バックル穴はめさ高くなる

「人生108回あるなら3回くらいは刃形屋さんやろうかな」と思えるくらいには微妙に刃型好きです。

フェニックスでは刃型の代行製作をしています。
で、今回は穴も空けてくれる刃型を作ってみたいな、という方向けの話

穴をタクサンあけたくなると高くなる

先日刃型見積もりをしたところ小さいのに8000円越え。
「なんでそんなに高いんですか!?」

ポンチが10個入っているからですわ( ´ー`)y-~~

それだけで問答無用で6000円くらいかかっちゃいます。

刃型の話をしよう:ピンと穴あけポンチの違い | phoenix blog

安くしたいならばピンであけるのも手ですけど、ピンはあくまでピンであり、穴は空かないと思ってください。

1mm以下や1,5mmくらいのポンチは一発破損の恐怖が有る

刃型見積もり担当上田「ムラキさん、この刃型見積もり依頼ですけど、どうですか?」

、、、んと、相手さんはどんな革抜く、って言っている?

「1mmのタンニン革です」

あ、駄目だわ。
1mmタンニンに1mmポンチ入れると2回抜くと破損するか、裁断カスがポンチに詰まって出なくなるね

「1mmくらいだったら大丈夫じゃないですか?」

スウェーデン鋼やポンチってのは基本的に両刃。片刃じゃないんだよ。

内側部分に0.2mm程度の傾斜が存在する。
図にするとこう

わずか0.2mmだけど、ポンチで穴をあけると、ポンチの穴の中にはこの0.2+0.2=0.4mmが圧縮された円形状の革が貯まるわけだ。

これが2mmなり4mmなら0.4mm程度は微々たるものだ。
でも1mmだったらなんと40%も圧縮される。
それだけ圧縮されたものがポンチの内部穴にみっちりと詰まってしまう。
で、詰まったカスが抜けなくなるんだわ。

1,2mm以下のポンチはクロム革以外にはあまり使わない方がいい

だから、1mmのポンチを使うならば使う革はせいぜい1mmのクロム革くらいが限度。
これだってよっぽどふかふかじゃないと詰まる。
で、詰まると針でつついても出てこない。

タンニン革や合成タンニン革などとにかく線維が詰まっていたり、固く仕上げている革には小さめのポンチは仕込まないほうが良い。

最悪圧縮されたカスが内側からポンチを押し広げようと反発してポンチを壊す。

バックル穴があると高くなる

バックル穴、ってのはバックル用のピンを通すための穴。
4mm×20mmとか、5mm×18mmなどとにかく「細長い」穴。

これを刃型に入れようと思うとぶっちゃけ1万円くらいあがる( ´ー`)y-~~

「1箇所1万円!?高くないですか!」

製法が違うんだよ、そもそもの。

バックル穴は工具へかかる負荷がデカイ

当社で売っているバックル穴用の工具は下記になります。

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美錠抜き – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

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バックル用穴あけ – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

これらの工具は「ベルトという分厚いものを抜く」「タンニン革である可能性も高い」「さらに抜いたカスが細長い」ということを考えると、ベルト穴あけ工具への負荷が高くなります。
カスが内側から工具をギュムギュムっと弾け飛ばそうとします。

で、これらは火造り、という技法で作られています。
みなさんが一般的に見るのはスウェーデン鋼、という技法です。この違いを見てみましょう

 

早くて安いぞスウェーデン鋼

刃型を作る際に使うのは一般的にはスウェーデン鋼。
巨大で硬いカッターナイフを曲げて溶接する、と思ってくれたらそれほど間違いじゃない

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この製法のメリットデメリットは

メリット
・安価に作れる
・単純な形ならば短時間で作れる
・小さくて細かい作業は苦手

デメリット
・溶接箇所がある
・切れなくなっても焼き箇所が1mm以下なので研いでも復活しない

この溶接箇所がある、ってのが曲者。
分厚い革を抜いたり、タンニンを抜くと何度も書いているように抜いたカスが内側から工具へ負荷をかけます。
パーンと弾けさせようとするんですね。

で、溶接箇所があるとここから裂けてきます。 

パーンッ!と弾け飛ばなくても、「なんか革の線維1本だけが裁断できずいつもプチプチと自分で切るなぁ」という場合は刃型の溶接箇所が開き始めています。

腕の悪い刃型職人が作るとここらが甘くて開いてきますね

聞いているだけでゲンナリする作り方をする火造り製法

基本的に火造り製法は継ぎ目がありません。
例えば幅5mm、長さ15mmの火造りバックル用刃型をどう作るかというと

・15+15+5*3.14=約45mm。外周45mmと計算
・45mmのパイプを用意
・これを熱して叩いて幅5mm、長さ15mmに細長く伸ばす
・そこから先端に刃をつける
・焼きを入れる

つまり、円形のパイプを細長く叩いて伸ばして加工していくわけです。

4mm×20mmならば52mmのパイプを
3mm×10mmならば30mmのパイプを加工します。

だからバックル穴やらが加わると高くつくわけです。

「じゃぁ極端な話、20mm×50mmみたいなものも火造りで作ったら高いんですか?」

何を裁断するかによるけど、それだけ大きいならばスウェーデン鋼で作れるから安く作れる。3000円かからんちゃうかな

「じゃぁ5mm×40mmとかは?」

問答無用で火造りになるので高くなる。
手打ちならば手打ち棒つけるからさらに+4000円くらいかなぁ

大きさと裁断する対象(タンニンかクロームか。厚みは?)によって全然方向性も値段も変わるんだよ、刃型は

amazonとかヤフオクの格安刃型は大概トムソン刃型

「amazonとかヤフオクでiphoneケース用の刃型です!楕円形です!と書いて安くセットで売っているじゃないですか?」

あれはトムソン刃型、という細くて切れ味いいけど強度がないモノを曲げて作っている。
さらに溶接箇所が2箇所あるので使っていたら確実に溶接箇所が開いていくだろうね。
数回使うだけならいいんちゃうかな。

際限なく高いけどものすごく精度が出る彫刻刃型

「うちでお願いしている刃型屋さん、時々とんでもなく高い見積もり出るじゃないですか。あれはなんで?」

例えば「犬のキーホルダー作りたい!」と思ったとき、通常刃型屋さんはスウェーデン鋼曲げるんだよ。でもこれだと精度出ない、絶対に。だから細かい刃型、ってのは1mm程度ズレて当たり前なんだよ

「プロなのに!」

巨大なカッターナイフ折り曲げて犬型にして溶接することを考えてご覧よ。
メチャクチャ大変。しかも精度が出ない

うちがお願いしている刃型屋さんは「それならメチャクチャ高いけど精度がメチャクチャ出る彫刻刃型」を勧めてくるんだよね。
これはすごいよ。0.5mmの狂いもない。

1 金属の固まりを機械で犬型に切り抜く
2 2mm小さい犬型のデータを作り、機械で1で作った犬の固まりをくり抜く。要は金属で出来た犬型ドーナッツ刃型を作ると思いねぇ
3 ここから先端尖らして刃をつけて焼きを入れる

びば、機械!
これだとデータ通りに絶対的な刃型が作れる。

欠点は
・コンクリの床に落とすと砕ける可能性がある
・粘り気がないので硬いタンニン革を抜くと一発破損の可能性がある
・とにかく高い

こんなところかな。
これはまたいつか解説しましょう

フェニックスさんはバックル穴工具2種あるけどどう違うの?

下記の2種だね。
美錠抜きは2000円ほど、バックル用穴あけは4000円ほど。

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美錠抜き – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

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バックル用穴あけ – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

抜ける穴の形が似たようなものだよ。
でもお値段2倍違うのは作りのガッチリ頑丈さに起因。

・美錠抜きのほうが大量生産的に作れる。ただ、欠点として全体的に華奢。
クローム革4mmやタンニン革1,6mmくらいまでならこれでいいんちゃうかな

・バックル用穴あけは重くて重厚。刃先部分が長い。
そのため保持しやすく安定する。
タンニン革2mm以上ならば絶対こっちのほうがいい。
あと、この工具、どう考えてもこの値段だと今後作れないと思う。
長年クラフト社はここに頼んでいるから作ってもらっているけど、高齢なりで「作れません~」と白旗あげられると他で作ってもらう。その時はこの値段では無理だと思う。

だから余裕あったり、厚い革ぬくならばバックル用穴あけがお勧め

バックル用穴あけ – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

でも手軽にバックル穴をあけたかったら、という裏技

「こちらのお客さん、1つの刃型にバックル穴4つ入れているんですよね。これだけで4万以上ですか。もうちょい安くする手ってないんですか?」

以前私がやった手だけど4×15mmのバックル穴を4箇所あけたいというならば、

1 バックル穴をあけたい場所の両端に4mmポンチを刃型に仕込む
2 4×15mmのバックル穴あけ用工具を用意。市販品あるならばベスト。ないなら作る
3 ポンチ2箇所あいているので目安になるので手の感覚で穴の両端を探してあけていく

ピンを2箇所仕込んであける、というのも手だけど、これだと視覚に頼らないといけない。
視覚に頼ると0.5mmズレることがよくある。

ポンチ2箇所あけて、手で持っているバックル穴用工具の両端をそこに当て込むとキレイに穴を安定的にあけられる

これならばバックル用刃型4万円もかからないから格段に安くなる( ´∀`)bグッ!

フェニックスでは刃型の代行制作も承ります

どういう革を裁断して何がしたいのか、などを説明していただくとそれに見合った刃型のご提案をさせていただきます。刃型も彫刻刃型からスウェーデン、トムソンまで提案可能です。

抜き型製作 | レザークラフト Phoenix(フェニックス) -レザークラフトの材料店 革、金具、道具、テキスト、教則本

大きさ、使用ポンチ本数を入れていただくとざっくりとした見積金額が出てくる簡易見積りフォームもありますので一度お試しくださいな。

抜き型(刃型)簡易お見積り | レザークラフト Phoenix(フェニックス) -レザークラフトの材料店 革、金具、道具、テキスト、教則本

 

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