刃型の話をしよう!32mm高刃のすごさとベンズの恐ろしさ

先日ベンズのスワッチ裁断を頼まれました。
で、渡された刃型は32mm高刃、と呼ばれる分厚い刃型。

今回はこの高刃のすごさとベンズの恐ろしさを解説してみましょう

ベンズはものすごく硬くて頑丈

まずベンズというもの解説から。

フェニックスは1926年創業の会社です。
(そういやあと9年で創業100年ですな。さすがにその頃にはもう私もいないとは思うが( ゚Д゚)y─┛~)

軍人さん向けの靴の底革を仕入れて販売している問屋でした。

で。
1900年代頭なんて靴底は今のようにゴム底は存在しなく、底革と呼ばれるものが使われていました。
従来の革と違い大変材料と手間暇がかかっています。

・ベンズと呼ばれる「腹や肩などの柔らかい部分を最初から省いて背中の頑丈な部分のみを残した」部位を使っている
・ただでさえ繊維が密集して頑丈なところにピット槽を使いタンニン成分をじんわりじっくりと染み込ませる

これらの手間と材料費がかかっているため底ベンズは頑丈な作りとなっています。

《革》国産底ベンズもネットショップで販売: レザークラフト・フェニックス

国産底ベンズ B級 (昭南皮革製) – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

で、フェニックスでは底ベンズは靴用ですのでそれ以外の用途、鞄やサイフにも使えるように沼南皮革さんにお願いして多脂ベンズというシリーズも展開しています。


昭南多脂ベンズ(サドルレザー) – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

頑丈なベンズ部分に脂を入れたものです。
厚みがありますが、これを贅沢に2mmや1,4mmなどに漉いてサイフや鞄作るとものっそいかっこいいです。

革は原皮・なめし・仕上げの3要素が重要ですが、この革は最初の原皮にかける金額がものすごく高いです。

スワッチって?

スワッチ、ってのは布や革などのサンプルのことです。
当社では下記のように革の形にくり抜きます。

昭南多脂ベンズ サンプル – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

大きさは1DS程度ですがこの裁断は従来の刃型では抜けません。

ベンズを裁断するときの刃型は32mm高刃を使う

従来の刃型は高さが19mmですが、ベンズの際は32mm高刃を使っています。
写真でみると一目瞭然。右側が19mmですね。左は32mm

ベンズはギュッッッッと詰まった繊維の固まり

刃型というのは垂直には裁断出来ません。
必ず!斜めに裁断されます。

刃が両刃になっており、斜めに裁断されてしまうからです。

「じゃぁ片刃で垂直にすればいいじゃん」と思うでしょうが、片刃はどうしても負荷がかかると簡単に壊れてしまいます。ご家庭の包丁をじっくり観察してみてください。両刃になっていると思います。

さて、繊維が締まっている厚み6mmあるようなベンズを19mm刃型で裁断>斜めに裁断される=ベンズが内側から刃に対してものすごい力で押し返します。

こうなるとどうなるか?
刃型の溶接部分から溶接がブチッとちぎれてしまいます。

32mm高刃は溶接部分が長い

それに対して32mm高刃は19mm刃に対して溶接長さが倍近い32mmあります。
結果的により強く溶接され、ベンズからの押し返しに強くなります。

よし、すごいぞ、32mm高刃!これでベンズ裁断も大丈夫!

とおもっていたんだ、 昨日までは、、、(´・ω・`)

鋼鉄パーツまで曲げてしまうベンズの恐ろしさ

ガッチョンガッチョンと抜いていたのですが、、

あれ??

ポンチ部分が抜け切れていない??
刃型がより深く入り込むようにクリッカーの力を調整しても無理でした。

????ポンチの切れ味が落ちた?いや、クリッカーの力は1トン越えるのでそれくらいでは裁断は可能。
っかしいなぁ????
刃型に詰まっているスポンジをどけて観察

ん?まさか、、

ポンチが刃型に対して斜めにかしいでいる!

ポンチを固定している根本の鋼鉄パーツがひしゃげているのか!
厚み3mmくらいあるのに繊維の力とテコの原理で曲げたのか!

ポンチから左の刃型までの距離は1cm程度ありますが、裁断の際にこの1cm空間で圧縮されたベンズが押し返そす力をギュ~~~~と刃型に返します。
ですが、刃は38mmと溶接がしっかりしています。
じゃぁ力がどこに逃げたかというとポンチの根本の鋼鉄部分です。

逃げ出そうとする力は逃げ道を探してウロウロと。
少しでも負荷に弱い部分を見つけるとそこに力が集中します。
今回のケースでは鋼鉄パーツを曲げてしまいました。

今回はベンズという繊維のしっかりしたものに与えられたクリッカーの1トン以上の力が巡り巡ってポンチの根本の鋼鉄パーツを曲げちまった、という話です。

結局

ポンチで1つ1つ抜いていきました。まぁ、作り直しですね、この刃型は。
6年くらい使ったのでもう十分でしょう

ちなみに昭南多指ベンズ茶は今回厚み7m越えです。

写真を見れば分かるように裁断面が斜めになっていますね。
7mm越えると吟面と床面では1mmのズレが生じますね。

今回のまとめ

・刃型は必ず斜めに裁断される。垂直ではない
…薄い革や柔らかい革ならばそれほど目立ちません

・ベンズはものすごく繊維が詰まっているので高刃を使わないと裁断出来ない

・刃型の中に刃型を入れたり、ポンチや刃型を狭い部分に密集させると、硬い革を裁断した際に刃型破損する可能性がある

32mm高刃を使うメリットは

溶接箇所が長くなり頑丈になる以外あるのかな?

香川の刃型屋さん「補強板が高くつけられる=地面から補強板までの高さを高く取れる
ってことは、

・布などを10枚20枚重ねて裁断出来る
・革の吟面に補強板が触れてしまう可能性を低く出来る

こういう点がメリットといやメリットちゃうかな」

あぁ、なるほどなぁ。ごもっともですわ。

フェニックスでは刃型製作代行も行っております。

抜き型製作 | レザークラフト Phoenix(フェニックス) -レザークラフトの材料店 革、金具、道具、テキスト、教則本

フェニックスで刃型を作ると、みなさんが刃型屋に直接頼むよりも確実に高くなります。
ですが、今まで10年にわたり代行で製作してきましたのでどういう点に気をつけるか、最初にどれくらいかかるのか、それを安く仕上げたいならばどのような方法があるか、などのノウハウが蓄積しています。

また、刃型屋さんはプロを相手にしたプロですので「いちいち細かく説明なんざしてられるか!」という会社も多いです。

当社に刃型見積もり依頼時に「こういう革を裁断する」「こういうものを作りたい」「設備はこういうものがあるor設備がないんです」など相談していただけるとより良い提案も可能です。

フェニックスが頼んでいる刃型屋さんは個人的には関西でもピカイチの腕前だと思っています。

凄腕といっても「ものすごく難しい刃型が作れる」というわけじゃないんです。
出来ること・出来ないことの区別がきっちりついて、出来ないことには「これだけお金払えば出来る手段があるよ」という引き出しを持っています。また、直角・水平・平行をキッチリと出せます。これだけのことが難しいんですよ、刃型の溶接ってのは。。。

余談

よこい「ポンチ外しちまえばいいんちゃいます?そうすればまだこの刃型使えるでしょ?」

そうだねぇ。そうなればまだ使えるね。
でも今までポンチ穴つけたスワッチ売ってきちゃったからなぁ。今から辞めると「今までついていたのになんで?」と言われそうなんだよね。

それに、、、
フェニックスって今7種のベンズスワッチあるでしょ?
これを全部まとめて7枚セットでリングに通しています!7枚全部買うより1枚分だけ安いですよ!という売り方したら結構人気出ると思うんだよね。

昭南多脂ベンズ サンプル – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP
昭南グレージングベンズ サンプル – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP
黒 ベンズ(茶芯) サンプル – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

よこい「そうっすか~?」

だってカッコイイもの!
うちのベンズは触ってみたら「あぁ、原皮が違うってこういうことか」「コシがあるってこうなのか!」「タンニンじっくり染み込んでいるってこういうことか」って一発でわかるもの。
やってみたいなぁ、7種セット

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