原皮の7種の傷の話 焼印、スクラッチ、虫穴、毛穴などなど


革ってのはデメリットが多い材料でして。
それらの傷の写真が欲しい、と要望が。

傷、傷ねぇ、、、焼印とか折れとかかな。
よし、ニッピの倉庫番の爺様に聞いてみよう!

「革の傷は7種類あるんやで」

ほぅ?

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革の傷は多種多様にありますが、今回は生体由来の傷を説明してもらいました。

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こちらはフェニックスの革コーナーに展示されている革、バベルですがこの中にも傷があります。

掻き傷=scratch

牧場の有刺鉄線などで家畜が受けた外傷

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虫由来

グラブ,Grub=寄生した牛ハエの幼虫が生育するときに皮を貫通して穿孔した孔傷
ダニ,tick=ダニの寄生により乳頭層に生じた穴やくぼみ
コックル,Coccle=羊皮乳頭層にみられるイボ状に組織が肥厚硬化した部分でダニの寄生による

倉庫番「これらは原皮がコンテナに入れられてどんぶらこっことやってくる間に蛆虫が原皮から出てきていることもあるんや。もちろん塩漬けがきちんとされていたらこれらの出現は少なくなるが、100%なくなりはしない」

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焼印

Brand、家畜の所有者が判別のために与えた火傷

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極端な話、アメリカ原皮でしたら2枚に1枚は焼印があります。

毛穴

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これは当店のベンズにたまに見られるのですが、毛穴の中の毛根が取れきれずにこのように黒い点々が直径1mm以下で残っています。
ナチュラル透明感のある仕上げをしない限りはそれほど目立ちません。

倉庫番「これも国産黒毛和牛などで冬に屠畜したものが発生しやすいように思えるなぁ。」

トラジワ

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wrinkle。首から胸の吟面に存在する生体のシワ。セッティングマシンによって革に張力をかけて引き伸ばしながらシワを取る方法があるが、仕上げ方法によっては完全にシワをとるのは不可能

個人的には革らしくて好きなんですけどねぇ

血筋

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Veininess。革となってから吟面に現れる血管のスジ。
牛の品種、原皮の鮮度不良、栄養状態、製革作業などの条件が関係すると考えられる

恐ろしいことに製品になり、クリーニング屋に出したら血筋が浮き出てきた、というケースも報告されている。

スクラッチ=小さめの引っかき傷
トラジワ=首付近にあり大きめ一直線
血筋=腹付近などによく見られスジが右往左往している

というように私は見ています。

本焼け

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マニュア、Manure
原皮の毛生面に付着している汚物(糞尿)をマニュア、といいます。
長期間これらがついた皮膚は皮膚病となり、塩蔵時、細菌汚染の原因となる。

倉庫番「糞などがついていて皮膚が焼けているんや。だから腹や尻付近に多いな」

かすれたようになり、手触りがガサガサとしています。

これ以外の傷は?

倉庫場「例えば剥皮時についたブッチャーカットや仕上げ時に出てくる梨地などもある。原皮、つまり、生物からもらっている以上は上記のようなリスクが有るのが革やな」

例えば下記の写真は製革家庭で折れた状態で鞣してしまった折れジワとなります。

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10枚買うから全部きれいな革ちょうだい、って言えるの?

基本的に革を使う、というのは傷があって当然です。
店頭で上記のように言われたら「10枚中2,3枚は何かしら傷がある革が入ります。革を使う以上当然です」と言うか、「顔料べったりの革使いましょう」と提案します。

「いや、俺は10枚も買うんだから全部ベストなものが欲しい!」と言われましたら「そうですか、それじゃ取引出来ませんからお帰りください。合皮のサンプル帳から選ばれたらどうですか」と言わざるを得ません。

うちの社長の名言は「人間が革にあわせないとこんな素材使い切れへん」というものですな

詳しく勉強したい方は

皮革用語辞典を読んでいると勉強になります。スマホアプリもありますので入れておいて損はないかと
皮革用語辞典|社団法人日本皮革産業連合会 JLIA

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