コバ処理の前に下地処理剤「目止め液」と「TXコート(※)」を使うと出来上がりが全然違う


フェニックスではコバ仕上げ剤に関して数多く揃えていますが、それぞれに意味合いや使い道が異なります。

が、下地処理剤である目止め液とTXコートはちょっと特殊です。
今回はじっくりたっぷりとそこらを解説していきます。

1211koba005[1]

コバ処理で重要なのは

ムラキがたまにやっている「4時間で叩き込むコバ処理講座」で口を酸っぱくして言っているのは「革の知識」「裁断」「接着」の3点。その上で「薬品知識」「技術」が成り立ちます、というのが講座の骨子です。

技術だけでも知識だけでもダメで、これらを複合的に組み合わせてコバ処理が形成されます。

下地処理剤という考え方

ペンキやプラモデルの塗料を塗るときなどに下地処理剤を塗ります。プライマーやサーフェイサーと呼ばれるものですね。
「素材」+下地処理剤+「塗料」、下地処理剤は素材と塗料を結びつけてくれる中間の仲人さんの役割を果たします。結果的に塗料は素材から剥がれにくくなり、長持ちします。

で、革の世界で「革素材」と「コバ仕上げ剤」の仲人さんとなるのが今回紹介する「目止め液」と「TXコート」というわけです。

目止め液

51377301[1]

目止め液  – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

目止め液は以前blogでも紹介しています。

柔らかい革のコバ処理ってどうやるの?: レザークラフト・フェニックス
コバ処理ってやり始めるときりがないけどね、という話 | phoenix blog

適している素材…かっちり目や固めの革、タンニン革や合成タンニンなど。背中の部位など繊維が締まっている部分にオススメ

塗り方…コバフェルトや綿棒などで。中に浸透するように。
乾燥する前にサンドナイロンで一定方向に面を馴らしていく。薄くヤスリがけをしているイメージ
乾燥する前にコバ仕上げ剤を塗る

ポイント…サンドナイロンを何度もかけると目止め液が剥がれる・薄くなりますのでその場合は再度塗ってください。

TXコート(※現在はDXコート)

82569764[1]

TXコート – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

 

※2021.8月~
TXコートは廃盤となり、[ DXコート ]としてリニューアルされました。

TXコートが廃盤、新しく【DXコート】が登場します。

 

TXコートは「合皮などにもコバを塗りたい」という要望を元にコロンブスが作った下地処理剤です。
エルメスのバッグなどでふんわりふわふわの革にオレンジのコバが載っている事があります。
ちょっとコバを指でつまむと「クッ」と板のような感触があります。それがこのTXコートと同種のものを使っていると思いますわ~

合皮にコバ処理は基本的に無理、だからTXコートを使う

合皮は革のように見えますが繊維を正しく編みあげてその上にビニール素材を載せたものです。
そのためコバ部分は隙間だらけになってしまっています。この隙間の上にコバ仕上げ剤を載せても隙間にガンガンと吸い込まれるわけです。
革は複雑、かつランダムに繊維が編み込まれていますので液体が吸い込まれないわけですな。

で、コロンブスさんは考えた。
「じゃぁ隙間の上に板を1枚載せて吸い込まないようにすればいいじゃないか」

TXコートは液体ですが乾燥するとカチカチに固まります。
これにより「コバの上に樹脂の板1枚を引く」ということが可能となりました。

ですので。。

適している素材…ふんわりふわふわな革、腹部分の繊維がゆるい部分、合皮など。究極的に言うならば帆布でもokです。

塗り方…コバフェルトや綿棒などで。表面1枚にスッと撫でるように。かすれないように。
乾燥後に紙やすり600番くらいまでで慣らしてあげるのもGOOD。無理にヤスリ掛けまではしなくてもok
その上でTXコートを再度塗り、乾燥する前にコバ仕上げ剤を塗る。

ポイント…乾燥前に仕上げ剤を塗ることでより強固に結びつきます。
ふわふわな革の場合はぐにゃりと曲がってしまい、将来的に剥がれやすくなります。
ですので下地処理剤とコバ仕上げ剤をしっかりと結びつけるのが重要

たとえ「柔らかい革にクリアのコバで仕上げるんだ!」という場合でもTXコートを塗っておいたほうがオススメです。コバの寿命が伸びます。

お守りとして

81211849[1]

カスタムクリーナーは持っておいて損はないです。
染料染めの革のコバは落とせないor革の染料も落としてしまいますが、顔料仕上げの革にはみ出たコバ仕上げ剤などを取り除いてくれます。50ccでもお守りとして買っておくと便利ですよ

カスタムクリーナー – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

まとめと雑談

・固めの革ならば目止め液、ふんわり柔らかい革ならばTXコート
・イリスはさらっと塗るのに向いています。エッジペイントはドロッとしており盛るのに向いています。カスタムはその中間です。自分の好みにあわせて使い分けましょう。
・コバ仕上剤 – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP
・カスタムクリーナーはコバはみ出しに使いますが、なにげにそれ以外にも使える機会があります。(何かを溶かして拭き取りたい、という場合など) お守りとして買っておきなはれ。

・しっかりとしたタンニン革の背中部分などでしたらこんなことしなくても水と帆布で磨いただけでツルツルになります。ここらが「革の知識」ですね

・コバ処理はきりがないから自分の目標点を定めておかないと泥沼にハマりますよ( ´∀`)bグッ!

質問 2016/06/14追記

現在、レザークラフトでブライドルレザー(Jベイカー)とサドルレザー(無名タンナー)を合わせて、手帳を作成しています。コバ部分の色合いを合わせるために、染料を使っているのですが、ブライドルレザー部分のみ斑にしか染まらず、何か手はないかと検索していました。

このブログの記事では下処理剤を使用することで染料の喰いつきがよくなるように感じましたが、ブライドルレザーや他の染料が入りにくい素材などで試行された際の経験などはないでしょうか?また、下処理剤+染料+コバワックスといった組み合わせでも大丈夫でしょうか?

今のところ、コバインクという染料を重ね塗りしたりなども試したのですが、染める前段階でコバを磨いた際に、ブライドルレザー内のロウ分が表面に膜を作ってしまっているために、染まらないような感じであまり効果がありません。

また、通常の染料より下処理剤+フェニックスコートなどの方が染まりはいいのでしょう。か?(フェニックスコートは染料としての喰いつきや耐久性はどのような感じなのでしょうか)

> 現在、レザークラフトでブライドルレザー(Jベイカー)とサドルレザー(無名タンナー)を合わせて、手帳を作成しています。コバ部分の色合いを合わせるために、染料を使っているのですが、ブライドルレザー部分のみ斑にしか染まらず、何か手はないかと検索していました。

ブライドルはオイルやワックス含んでいるのでコバ処理に向きません。
両方がコバ仕上げ剤を弾いてしまうんですよ。

> このブログの記事では下処理剤を使用することで染料の喰いつきがよくなるように感じましたが、ブライドルレザーや他の染料が入りにくい素材などで試行された際の経験などはないでしょうか?また、下処理剤+染料+コバワックスといった組み合わせでも大丈夫でしょうか?

下地処理剤は食いつきがよくなりますが、染料には効果がありません。
コバ仕上げ剤は顔料系であり染料とは全く異なります。やるとしたら目止め液+フェニックスコートですかねぇ。
下地処理剤+染料は相性はよくありません。

> 今のところ、コバインクという染料を重ね塗りしたりなども試したのですが、染める前段階でコバを磨いた際に、ブライドルレザー内のロウ分が表面に膜を作ってしまっているために、染まらないような感じであまり効果がありません。

コバインクは協進エルさんが販売しているものですね。
染料のため色落ちの可能性があるため協進エルさんはコバワックスで仕上げがオススメとしています。

で。
ブライドルレザーの蝋は水分を弾くため染料系のコバインクは弾いてしまいます。
また、蝋は顔料系も弾いてしまいます。
ワックスやオイル仕上げの革とコバ仕上げは相性が悪いですね。弾いてしまうんですよ。

> また、通常の染料より下処理剤+フェニックスコートなどの方が染まりはいいのでしょう。か?(フェニックスコートは染料としての喰いつきや耐久性はどのような感じなのでしょうか)

フェニックスコートですが、「染料に限りなく近い顔料」とおもってください。
染料に比べると色落ちがしづらくなっています。
その割に染料のような透明感のある仕上がりとなります。

過去の関連blog:


One thought on “コバ処理の前に下地処理剤「目止め液」と「TXコート(※)」を使うと出来上がりが全然違う

  1. ピンバック: コバ仕上げ剤比較 - 静かにレザークラフト コバ処理剤まとめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*